株主がもらってうれしい最新の株主優待品はデジタルギフト
個人投資家が増えた現在、あらゆる投資法が関心を集めていますが、その一つが「株主優待」です。これをうまく利用しておトクな生活を送るという「株主優待生活」をブログやSNSで公開する有名人が登場し、ノウハウ本が次々に出版されています。こうしたトレンドに注目し、今、株主優待にデジタルギフトを活用する企業が増えてきているようです。
株主優待は日本独自の贈り物の風習が起源
ご存知の方も多いかもしれませんが、株主優待とは、株価の配当とは別に、株主だけの特典として年に1〜2回の決算時期に合わせ、企業からの贈り物として自社商品やサービスを株主に贈る日本独自の制度です。株主優待の受け取り権利確定日は3月と9月に集中しているので、この季節になると優待目当ての投資家へ向けて、ネットや雑誌で情報が盛んに発信されます。日本国内の上場企業のうち、株主優待制度を導入している企業は約1520社(2020年11月時点)。(*1)
“単に配当金を受け取るのとは違い、その企業の特色を活かしたユニークな商品が配られるので、これを楽しみに株式投資をするという人もいるようです。企業側としても、自社商品を知ってもらう良い機会だという考えがあり、株主たちがより愛着を持って長くその会社の株主であり続けることを期待”して行っているとも言えるでしょう。(*2)
“株主優待は、元々お歳暮やお中元を贈り合う風習が起源であり、企業の成長を応援する株主に対する感謝を込めて贈られるようになったと言われています。”(*3)
代表的な株主優待品といえば自社商品や優待券
株主優待で配られる商品は、業界や企業によってさまざまです。代表的なものとしては、自社商品や自社で使える割引券や優待券、飲食料品、日用品、カタログギフト、限定品などがあります。食品メーカーや日用品メーカーが自社の食品・飲料品を贈ったり、外食企業が自社のレストランで食事できる優待食事券を贈ったりする例はよく見られるものですね。(*2)
食品メーカーや日用品メーカーといったBtoC企業では、株主が消費者として社名や自社商品を認知していることもあり、株主優待商品として堅実な人気があります。
一方、建設業会や部品メーカーといったBtoB企業では、自社商品を提供することは現実的ではなく、ギフトカードや商品券など、換金性の高い商品を贈ることが多いようです。
その他にも、映画会社の映画招待券、ホテルの宿泊券・宿泊割引券、鉄道会社の回数券・優待乗車券など、会社の施設やサービスを受けられるものもあります。(*2)お目当てのアーティストがいるのなら見逃せないのが、株主だけの特典として、レコード会社が株主限定で開くコンサート。(*2)
また最近では「寄付」という項目を設けている会社が増えています。“複数の選択肢の中から株主優待品として社会貢献活動への寄付を選んだ場合、株主へ贈られる予定だった株主優待品相当の金額が、選択した社会貢献活動へ寄付されるという仕組みです。”(*4)
このようにバリエーション豊かな株主優待ですが、最先端のトレンドとして注目されているのがデジタルギフトです。
デジタルギフトは株主優待の最新トレンド
新型コロナウィルスの影響により、ここ1、2年で株主総会をリアルからオンラインへ移行する企業が急増しました。それに伴い、株主優待もデジタル化にする動きが広まっています。株主優待としてデジタルギフトが優れている点はいくつも挙げられます。
まず企業側のメリットとして、最も大きいものといえるのが「コストカット」。株主総会がリアルであってもオンラインであっても、株主優待をデジタルギフト化することにより、従来の配送コストやその作業費を大幅にカットすることが可能です。作業面を考えても、株主一人一人に荷物を詰める作業は企業側にとって年々負担が増しています。それがハガキやメールでURLを送るだけとなれば、工数の違いは一目瞭然ですね。
昨今ならではのポイントとして、「衛生面」は欠かせない要素となってきました。従来のように商品を郵送する場合は、どうしても商品を作る人、梱包する人、運ぶ人と、株主に届く前に多くの人と接触を重ねることを避けられません。その点、デジタルギフトなら受け手は受け取ったURLを読み込み、表示されたバーコードを近くのコンビニなどで見せ、商品と交換するだけなので、接触者の数をぐっと減らすことができ、衛生面の配慮につながります。
最後に、株主優待をデジタルギフト化するメリットとして忘れてはならないのが「宣伝効果」です。株主優待に関するブログや書籍がのびていると前述しましたが、株主優待狙いの個人投資家たちの間の情報交換は、横目に眺めるだけではもったいないほどの宣伝力を秘めていると言えるでしょう。株主優待品のデジタルギフト化はまだ始まったばかりなので、パイオニアとして企業の先進性を打ち出すチャンスにもなるかもしれませんね。
まとめ
不況が続く中、会社に愛着を持ち、自社の株を長期保有してくれる株主は企業にとってありがたい存在です。そんな株主を一人でも増やし、少しでも長く株を持ち続けてもらうためには、企業として、他社と差別化をはかる、とっておきの優待品を準備する必要があります。デジタルギフトは「企業」と「株主」、双方にとって魅力的な株主優待品として、今後いっそう増えていくと考えられます。
<参照・引用サイト>
*1:松井証券『株主優待とは』
*2:野村ホールディングス・日本経済新聞社 man@bow『株主優待ってどんなもの?』
*3:楽しい株主優待&配当『株主優待って海外にもあるんですか?』
*4:マネーの達人『株主優待で「寄付」実際に社会貢献活動へ寄付できる団体6つ紹介』