経産省も推薦!オンラインで行うメリットとは? 今話題の「バーチャル株主総会」
コロナ禍の中で注目されている株主総会の形式としてバーチャル株主総会が挙げられます。しかしバーチャル株主総会と言っても様々な種類があります。そこで今回の記事ではバーチャル株主総会について種類別にご説明します。
そもそもの株主総会(定時株主総会)とは?
経済産業省が「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド」を発表しました。「株主総会」とは会社の持ち主である株主によって構成され、会社の意思決定を行う最も重要な機関です。
毎事業年度の終了後に開催される定時株主総会と、必要に応じて開かれる臨時株主総会があります。定時株主総会は決算後の3ヶ月以内に開催しなければならず、書面決議が認められる場合もありますが、基本的には会議の開催が義務となっています。
会議では決算の承認や事業の報告、余剰金による配当の決定などが行われます。また役員(取締役、監査役)の任免といった人事や、会社の方針や戦略など経営に関する事項について決議されます。
株主総会の形式は、これまでの指定の会場に関係者が集う「リアル」、リアルで開催するとともにオンラインも用いる「ハイブリッド」、オンラインのみで行う「バーチャル」、と大きく分けて3種類存在します。
①リアル株主総会
従来の一般的な形式で、実際の会場に取締役、監査役、株主などの関係者が一堂に会して開催されます。
②ハイブリッド型バーチャル株主総会
ハイブリッド形式には「参加型」と「出席型」の2種類があります。どちらもリアル株主総会が開催され、会場にいない株主へインターネットを介してその様子が中継される点は同じです。
「参加型」は、オンライン参加の株主は「出席」扱いにはならず、会社法上の質問や動議はできません。審議を確認・傍聴することや、進行によっては参加者からのコメント等として取り上げてもらうことは可能となっています。
「出席型」は、オンライン参加の株主もリアル株主総会へ来場した場合と同様「出席」したことになり、審議に参加し、決議にも加わる想定で執り行われます。「開催場所と株主との間で情報伝達の双方向性と即時性が確保されている環境」という条件を満たしていることが必要です。
③バーチャルオンリー型株主総会
リアル株主総会を開催せず、関係者全員がインターネットなどを用いて、オンライン上で開催される株主総会に会社法上の「出席」をする形式です。
これまでは「物理的に入場できる場所」のない株主総会は会社法上、認められませんでした。新型コロナウィルスの影響により、産業競争力強化法改正法案において会社法の特例として「場所の定めのない株主総会」に関する制度が創設されたことから、バーチャルオンリーでの開催が可能となりました。
しかし、上場企業が対象で、経済産業大臣・法務大臣の確認を受け、定款で定められていること、が条件であるため実施には課題の残る企業が多いのが現状でしょう。
なぜ今、バーチャル株主総会への関心が高まっている?
株主総会のバーチャル化、ハイブリッド化が進んでいる背景には、やはり新型コロナウイルス感染症の感染拡大が最大の理由のひとつです。
従来のリアルな株主総会では、県をまたぐ遠方からの出席者も含め、関係者が一つの会場に集まることから3密(密閉、密集、密接)になってしまい、株主を感染のリスクに晒してしまうことになります。
経済産業省ではHPの「株主総会運営に係るQ&A」において、
- 株主への来場を控える呼びかけ
- 会場の入場人数制限
- 出席の事前登録制
- 疑いのある症状を有する株主の入場断り
- 株主総会時間の短縮
といった事項を「株主の健康に配慮した措置」として可能にするなど、リアル株主総会での感染症リスクの低減を図っています。
しかし、リアル株主総会のみで感染対策を行って実施する場合には、コストやスタッフへの負担が大きくなり運営や進行が困難となることが考えられます。
そのため冒頭のガイドなどを発表することで、バーチャル株主総会も併せて行うハイブリッド型の浸透を図り、実施を推奨しています。
コロナ禍のテレワークの実施によりオンライン環境やweb会議システムが普及したことなどからも、株主の安全を考え、バーチャル、ハイブリッド化した株主総会を検討、実施する企業が増えています。
リスク回避だけじゃない、株主総会をオンラインで行うメリット
バーチャル株主総会には感染防止以外にも、次のようなメリットと特徴があります。
・これまで来場できなかった株主も参加しやすくなる
オンラインで遠方や海外にいる株主なども距離に関係なく、参加・出席できるようになります。リアルな会場へ足を運ぶ必要がないため、交通や宿泊費、日程調整等、株主の時間やコスト負担の軽減へ繋がり、参加株主の拡大が見込めます。
・参加方法の多様化、株主総会の透明性によるイメージアップ
コロナという世界的未曾有の苦境の中、状況に合わせ柔軟に対応する姿勢は企業のイメージアップへと繋がります。また株主総会への多様な参加方法を用意することは、株主が安心して参加・出席でき、好印象を抱くものでしょう。
さらにバーチャル株主総会ではインターネットを介した動画配信により、リアルタイムでの一般公開も可能なため、クリーンで開かれた株主総会と企業のアピールになります。
・オンラインによる受付でアンケートなどが実施できる
バーチャル株主総会への参加受付はオンラインで行うため、従来は得られなかった株主のメールアドレス等が収集できます。入手したメールアドレス等で株主向けアンケートや、オンラインでのミーティング・説明会の案内など、その後のコミュニケーション促進へと活かすことができ、より有効なIR活動および施策へと繋がります。
・双方にメリットが多いデジタルギフトをお土産に活用できる
バーチャル株主総会と親和性が高く、リアル株主総会にもメリットが多いデジタルギフトをお土産として活用できます。
- 株主総会実施後にオンライン上で即時配布できる
- メールやSNS上で完結するため、現物の受け渡しが発生せずに衛生的
- 物品手配、配送料、数量管理、梱包作業などの業務負担・時間・コストが削減できる
- 株主がスマホなどで受け取れるためいつでも手元にあり、使いやすい
- リアル株主総会では株主の荷物を増やすことなくお土産を配布できる
利便性に優れたデジタルギフトは、リアル、バーチャルともに株主総会のお土産として注目度が高まっています。株主総会のデジタル化に合わせ、お土産もデジタル化することで、世情に明るい企業としてのアピールもできます。
新型コロナウィルス感染症という事態により急速に導入、注目されはじめたバーチャル株主総会ですが、人材不足やコスト削減といった観点から、コロナ以降においても需要が高まると考えられます。これを機に、自社と自社の株主に合った株主総会の形式を検討してみてはいかがでしょうか。
<引用・参照元>
・経済産業省 産業競争力強化法に基づく場所の定めのない株主総会制度説明資料
・テレワークナビ 注目されるバーチャル株主総会とは?背景や注意点を解説